“サンタクロース”って何者だろう?

「なぁ、サンダー。オレ思ったんだけどな?」
グレイは、そう唐突に口を開く。
「なにを?」
サンダーは、キョトンとして聞き返す。
「サンタクロースとオーディンは同一人物じゃないか?」
グレイは、思った事を率直に述べた。
「は?」
予想もしなかった答えに、サンダーはそう声を上げる。
【サンタクロース】とは言うまでもなく、χmasに子供の枕元にプレゼントを置いていくという慈善事業者のお爺さんの事で、
【オーディン】とは、北欧の神話に出てくる主神だ。
どう考えても、共通点が浮かばない。
……ただ1つ、出身地がヨーロッパという事を除けば。
「サンタクロースって、悪い子供をあの世に連れてっちゃうって話聞いたんだよ。」
グレイは、思った事の根拠を話し始めた。
「オーディンって、戦死者を集めたヴァルハラっていう館の主で、それ故に死の神って呼ばれる事もあるらしいんだ。」
グレイは続けてそう話す。それを、サンダーは適当に相槌を打ちながら聞いている。
「で!あの世への通路が開けるって事は、サンタクロースってのはやっぱオーディンじゃないかと思うんだ!」
グレイは、そう結論を述べる。
「いや、オーディンが世界中の子供達に無償でプレゼントを贈るなんて事しないと思うよ?」
サンダーはそう答える。
「え~、そうか~?」
グレイは不満そうにそう答える。
「……大体そういう事なら、オーディンよりむしろトールやロキの方が確率あると思うけど?」
サンダーは、そう続ける。
【トール】とはオーディンの子供で、北欧神話に出てくる神々の中で最も強いと言われていて、
【ロキ】とは、オーディンと同じく北欧神話に出てくる、良い事も悪いこともする神様の名だ。
「え~……何でだよ。」
グレイは、そう問い返す。
「トールなら子供の為の慈善事業なら平気でこなすだろうし、ロキの娘は冥界の支配者だし。」
サンダーはそう答える。
「っでもさ、オーディンの馬は全ての世界を廻れるんだぜ?!」
グレイは負けじとそう返す。
「うん、でもそれってスレイプニルでしょ? スレイプニルはロキの息子だから、ロキが乗ったって何ら不自然はないでしょ?」
サンダーはしれっと答える。
【スレイプニル】とは、北欧神話中最速の馬で、(何を思ったのか)ロキはこの仔をオーディンに献上した。
「……それに、ヨーロッパのクリスマスには、サンタの横にヨーロッパ版なまはげが出現するって聞くし。」
サンダーはそう続ける。
「なまはげが何だって言うんだよ?」
グレイは怪訝な顔でそう問う。
「だから、それはロキの友達の巨人か小人かもしれないねって話。」
サンダーはそう答える。するとそれに、グレイは納得の意を示す。
「……やっぱ、ロキなのかな、サンタクロースって。」
グレイは溜息を吐いてそう結論付ける。
「……サンタさんが北欧神の1人だったらって話だけどね。」
サンダーは淡々とそう答える。
その答えにグレイは気の抜けたようにもう一度溜息を吐いた。
審議は決着がついたようだった。

その様子を周りで見守っていた一同は、話の内容が何で、どういう内容に纏まったのか今一分からなかったが、
取り敢えず2人が仲良さそうにしているので、放って置く事にしたというのは、また別のお話……。




この間TVでサンタクロースに関する色々な話があったので、
それを元にサンタクロースが何者なのかという議論を、サンダーとグレイにしてもらいました。
話の発端であるサンタクロース=オーディンというのは私の持論ですが、
私自身があまりオーディンの事を好きではないので、サンタクロースがオーディンだったら嫌だなと、
サンダーに反論して頂きました。……しかし、サンタクロース=ロキという結末は予想外でした;
何か書いてるうちにサンダーが話をスムーズに進めてくれましたよ(笑)
ついでに。
ロキとトールとオーディンとスレイプニルの詳しい説明は、
『北欧神話』で検索すると、説明サイトさんが出てくると思います。


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